奥手な二人の両片思い
「もう! お父さんってば!」



コレクターの父に少しイライラしつつ、本棚から動物と海の生物が書かれた漫画を取り出し、バッグに突っ込んだ。



【今日言ってた漫画だけど、お父さんがまだ読んでないのがあったから動物系のやつでもいい?】

【いいよ! 貸してくれるだけでありがたいし!】

【ごめんね。明日持っていくね】

【ありがとう! 楽しみにしてる!】



上川くんにメッセージを送信。
返事を確認し、溜め息をついた。

水族館楽しんでたし、海の生き物なら楽しんでくれるかな。



翌朝。



「……おはよう」

「おはよ」



朝食を食べながら、起きてきた父に挨拶を返した。

父は漫画が大好きで、収集癖がある。
昔、自分の部屋に収まりきれない量になっちゃって、お母さんに怒られていたほど。



「ごめん。お母さんには内緒にして」

「……まだ何も言ってないよ」



昨日イライラしたから、チクったんじゃないかとビクビクしている様子。

すると。



「あら~、何の話してるの~?」



タイミングよく母が父の朝食を持ってやってきた。



「あぁ……いや、別に何でも」

「漫画の話。ごちそうさま」

「漫画? また何か買ったの?」



漫画という単語に激しく反応し、質問攻めし始めた母。

ちゃんと整理しないのが悪いんだからね!

焦る父を置いてリビングを後にした。
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