明日、雪うさぎが泣いたら

頼りない灯りをぼんやりと見つめる。
勿体なけれども、今夜は真っ暗が怖かった。
目を閉じるのも、まだ難しそうだ。


「小雪? まだ起きてるの? 」


漏れた灯りに心配してくれたのだろう、長閑の声が遠慮がちに掛かる。


「……うん。ごめん」


返事があったことに少し安心したのか、すっと戸が開き長閑が顔を出してくれた。


「謝ることはないわ。原因は恭一郎様なのでしょう? 」


長閑の睡眠まで奪ったことを詫びると、ゆっくりと首を振り、彼女は核心に触れた。


「どうして? 」


『夢のせいなのね』とは言わない長閑に驚くと、くすりと少しだけ意地悪に笑う。
兄様は、長閑には何か打ち明けていたのだろうか。
あまり自分のことを話したがらない性格だと思っていたから、余計にびっくりだ。


「いいえ。もちろん、あの方は私に相談されたりはしないけれど。恭一郎様に浮いた話がない理由って、あなたの他にいないじゃない、小雪」

「……それは、大分意味合いが違うと思うの」


私が原因なのだろう、と思う。
でもそれは、『私を想っているから』というのとはまるで違う。


「そうかしら。仮に手の掛かる妹がいたとしても、それは自分の恋愛に影響を与えるようなものではないでしょう。まして、恭一郎様なら誘いも多いでしょうし」

「……たまたま、好みの方がいなかっただけかも」

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