天魔の華は夜に咲く
「さてと、早速だが」


という魔王の言葉に四大魔将は固唾を飲んだ。

ここは城の一室。小さな会議室だ。

四大魔将全員が天界についての話だと確信し、真剣な面持ちで魔王を見つめた。

しかし第一声は

「センジュの件だけど」


天界の話ではなくセンジュの件が先に出た。


「伴侶を早めに決めてくれないか」

「・・と、申しますと?」

「昨日の件は皆知っているだろう?天界のウリエルが動いているらしい。まあ、私が負けるワケないんだけどね、センジュには幸せでいて欲しいから・・早く子供を作って欲しい。もしも私が居なくなったら魔界は荒れるだろう。だからね」

「そんな、あなた様にもしもなど」


とエレヴォスが必死に訴えたが、魔王はうんうんと頷いているだけだ。


「そうなんだが・・実はお前達に隠している事がある」


ドクン


「なんですか!?」

アルヴァンも食い気味で聞き入った。


「どうやら、17年前・・天使との抗争の中で天使による呪いを受けているみたいでね」


「呪い!?一体なんのです!?」


「力の制御だ。いつの間にか背中に聖痕の様なものがついてた」

「聖痕?天使のですか!?」

「ああ、どうやらそうみたいだと気がついたのは最近だ。17年前には無かった。徐々に浮き出てきたみたいでね。力も最近になって制御されているようだ」

「なんて・・事を」


フォルノスは今にも歯が砕けそうなほど歯ぎしりをしている。


「それ以外の効果は今の所わかってない。力が弱体化させられているのは感じるが、死に至るものなのかはわからない」

「天使共を捕らえて呪いを解く方法を吐かせます!!俺がウリエルを!」


椅子が倒れるほどの勢いでセヴィオが言った。


「うん、だけどウリエルは四大天使の中でも手強い。総力戦になるかもしれない」

「あなたを護る為なら我らはどうなっても構いません!!」

「ハハハ、アルヴァン。期待している。だが死ぬのは許さん。お前達四大魔将の誰かがセンジュの婿になるのだからね」

「・・・我が君・・」


エレヴォスは悔しそうに俯く。

魔王はしっかりと釘を刺した。


「あ、センジュにはこの事は内緒だ。いいね」

「・・・御意」


皆静まり返った。

魔王の力が半減している。

そこに攻め込まれるのは大打撃だ。


_なんとしても、勝ってみせる。この方を死なせるわけにはいかない。


四大魔将は一致団結した。


「まあ、私も早めに孫の顔が見たいっていうのが本音なんだが。ハハハ」


途端に張り詰めた空気が変わった。真面目な話はすぐに終わった。


「進捗はどうなの?皆、センジュと上手くいってるか?」

「御意!」
「はい!」
「もちろんです!」
「ええ!」


4人は力強く返事をした。

魔王はそれが面白かったらしい。ツボっていた。

「ハハハ、ならいいんだ。だがお前達で争うのだけは禁ずる。センジュが誰を選ぼうともお互いを認める事だ。そんなところで戦力が減ったら天使達に馬鹿にされるぞ」

「・・・・」

それに対しては全員黙りこくった。


「うわー、皆真面目だね。ま、面白いからいいけど。ハハハ、センジュはもてもてだな~」


_ワザとだ。絶対楽しんでらっしゃる・・・。


4人揃ってため息をついた。


「今日のセンジュの護衛は?」

「俺です」


セヴィオが手を上げた。


「今日は姫様と街に視察に行きます」

「ああ、あのスラム?」

「はい。新しく建造物を建築しているのを見に行きます」

「そうか。センジュはお前が一番気軽に話しやすいだろう。年も近いし」

「はい!」

「期待してる」

セヴィオの瞳がメラメラと燃えた。


_俺には俺の出来る事をする。この方の為に。



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