天魔の華は夜に咲く
眩しさの中、ゆっくりと目を開ける。


「あ・・あぁ・・」


自分を護るように目の前に2人の陰が映った。

驚きで放心した。

「フォル、ノス・・・?」

「何してる!!後ろに下がれ!」

フォルノスはセンジュの腕を掴むと階段へ放り投げた。

「フォルノス!!」

傷だらけのフォルノスが目の前に立っている。

ミカエルの雷の剣を氷で受け止めたのだった。

その隣にラファエルの姿もあった。

瓜二つの2人を前にし、ミカエルの部下である天使達はたじろいだ。


「ラファエル様が2人だと!?」

「待て、一人は魔族だ!」

「似すぎだろ!ぐああっ」


ドシュッドシュッ!!


「くだらん・・」


フォルノスは氷柱を作ると天使達に向かって突き刺した。

容赦がないのは間違いなくフォルノスだとセンジュは確信する。


_生きてた・・フォルノスが生きてた!!


喜びにセンジュは一気に立ち上がった。

嬉しさがこみ上げ、力が湧く様な感覚だった。


「確かに・・似ているな」

「お前は・・?」


ラファエルは意味深に笑った。

それから一瞬にしてフォルノスの存在を理解した。


「なるほど・・お前は俺だ。俺の一部だ」

「・・なんだと?」

「見ろ・・お前と俺の纏ったオーラが互いを引き合わせている」


フォルノスにはそんな記憶は一切ない。

ラファエルは切なげに笑った。

「そうだったか。俺はもうずっと昔から堕天使だったという事か・・。力を魔界に落としたんだな」


_だから20年以上も天使として上手く力を使う事が出来なかったのだ。力が失われた感じだけが残っていたのか。抜け殻の様に。


「お前が俺の・・だと?」

「こちらに手をかざせ。その娘を護りたいなら」


疑い深いハズのフォルノスは躊躇わず自然に手を向けた。抗う感情が起こらなかったのだ。
ラファエルは指先でフォルノスの指に触れた。
その瞬間だった。

ゴオオオッ

と、突如センジュの目の前に嵐が舞い起こった。


「何!?フォルノス!?ラファエル!!」


激しい風は辺りを巻き込んだ。

「わああっ!」

「ミカエル様ああっ」

天使達は羽根が生えていた為、風に乗って飛ばされてしまった。


「ぐ・・うぐうあああっ」


ミカエルも同様、凄まじい旋風に飛ばされていった。





目を閉じる程の旋風が止むと、辺りは静まり返った。


「フォルノス・・ラファエル・・っ」


ゆっくりと目を開くと、目の前に羽根が見えた。

その羽根は漆黒。

それは『堕天使の象徴』だった。カラスの様な漆黒の羽根だ。

男はセンジュに手を差し伸べた。

「何してる・・帰るぞ」

「フォルノス・・なの?それともラファエル?」

「さあ?どっちだろうな」

意地悪そうに言うとセンジュの手を取って階段を降りたのだった。
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