天魔の華は夜に咲く
センジュの口は終始ぽかんとしていた。

瞬きすらもしないうちに、知らない場所へとやってきたからだ。

言葉を失うとは正にこの事。


「あはは、驚いてるねぇ。その顔、傑作だな」


と楽しそうにしている男、もとい父。


「こ、こんなの誰だって・・ひっ!?」


驚きつつ父の顔を見上げると、艶のある黒髪が腰まで伸び、頭には鋭い角が生えていたから更に驚いた。


「言ったろう?人間じゃないって」


「人間じゃ・・ない?・・」


驚き過ぎて声が上手く出ない。

微笑みながら父はすぐに答えてくれた。


「ここは魔族の世界、そしてお前のパパは魔界の王なんだよー」


と、頭をなでなでされた。


状況について行けずにセンジュは硬直したままだ。

「・・・」

「ありゃ・・まあ、仕方ないか。初めはこんなもんだろうね」


父はセンジュを近くのソファーに座らせた。

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