翔んでアルミナリア
「とりあえず先に進んでみようか」
諦めたように蓮くんがつぶやく。

「うん」

立ち止まっていても、靄が晴れる気配はない。わたしたちはしっかり手を繋いだまま慎重に足を進めた。

「黄砂でもないし、何なんだろうな…」
不安を紛らわせるように、蓮くんがぶつぶつと口にしている。

彼と繋いでいないほうの手を伸ばしてみるけど、虚しく空を掻くばかりだ。

あ…足元の感触が少し変わった。靴の裏から先ほどより凹凸を感じる。
道の途中で舗装が変わる…なんてことある?
というか、舗装だけじゃない。

「なんか空気が違くない?」
わたしより先に蓮くんが口にする。

「うん違う」
空気が澄んでいる。登山をしているときを思い出す。緑を含んだしっとりとした新鮮な大気だ。

前方がぽうと明るい。ほっとすると同時に、頭の中で警鐘が打ち鳴らされる。
どうして日が沈んでいる時刻なのに、明るいんだろう。それともなにか光源があるのか…

それでもわたしたちはその光に向かって歩くしかなかった。しぜん足が早くなる。
あと少しだ。

立ちこめる靄を抜けて、光の中へ———
< 14 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop