綺桜の舞う
「いやいや、俺の場合深夜徘徊だから」
「家帰んなよ。危ないよ?」


雪兎の視線を感じてふっと横を見る。


「ん〜。俺ね、家嫌いなんだよね。息詰まっちゃう」


にっこり笑顔は俺と同じでやけに嘘くさい。
営業スマイルの刷り込みのせいか、それとも、他に何かあるのか。


「家嫌い?」
「まぁ。うちの家無駄に金持ちだからさ。
出来が悪かった兄貴2人とは違って、俺は進学校入っちゃったし。
跡継ぎ俺に確定かなって」


そしたら息しづらいよね〜、興味ないし、とポケットからスマホを取り出す雪兎。


「彼女いんの?」
「いたら連れてきてるよ。
まぁ少なくとも、あの親の言いなりになってる間は作る気ないよ。迷惑かけたくないし」


雪兎の手には震えるスマホ。
画面をタップして耳に当てる雪兎。


「もしもし。……うん。……ん、今行く」


真剣な声。
すぐに立ち上がる雪兎。


「なんかあった?」
「……襲撃された」
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