綺桜の舞う
「あー、今日はここまでにしときますね」


教卓の前で時計を見上げながら授業を終わらせる英語教師。
直後、チャイムが鳴って昼休みに入った。


……何も聞いてなかった。


「みーなとっ」
「何」
「昼行こー!」
「ん」


俺の教室に来てでかい声で叫ぶのは伊織。
昼休み。
俺が弁当を持って、伊織に近寄ると、教室を覗き込みながらポツリと呟く、伊織。


「満島蛍って、どの子?」
「あ?」
「いやいや、今日連れて帰る子でしょ?叶奏ちゃんと一緒に」
「あぁ……それなら……」


俺は振り返って教室を見渡す。


教室、窓際。


「あれ。あの、茶髪の髪肩くらいの」
「あー……あの子か。彼氏と仲いいって有名だな〜」


伊織はスマホを向けて盗撮。
シャッター音の鳴らない無音カメラ。


「ダメだよ、伊織くん」
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