綺桜の舞う
31.タバコの香り


「天馬薫風、ねぇ……」


俺はそんな独り言をこぼしながらタバコをふかした。
倉庫裏、倉庫の壁にもたれてひっそり、俺が毎日隠れてる場所。


タバコの煙はうっすら吹く風に流れて消える。


天馬薫風。
やけに懐かしい名前。
ったく、ろくでもないやつについて行ったと思ったら、なんの縁だよ、ほんとに。
これが運命だって言うんなら、クソみたいな人生を作り上げる才能があるのかもしれない。
俺も、薫風も……湊も。


馬鹿らしいったらない。


「伊織さん」


ふと、最近よく聞くアニメ声が耳に届いた。


「なーんで来るかな。タバコ吸ってんよ?」
「消してくださいよ。せっかくお話に来たんですから」


にっこり笑うのはあんずちゃん。
すたすたと近づいてくるから、俺は慌ててタバコを消した。


「1人で何してたんですか?」
「タバコ吸ってただけだよ?」
「そうなんですか。……まぁ、なんでもいいですけど」
「あんずちゃんはなんできたの?」
< 270 / 485 >

この作品をシェア

pagetop