綺桜の舞う
相対して、同じようににっこりと笑う総長。
この族を立ち上げて、夜桜の後に世界一を謳う族にした男。ただの、チャラい男。


「あっそうだよね。そうそう。私用事があってきたんだった」


思い出したようにパチンと手を叩く。
カーディガンがクッションしてか、全く音は出ないけども。


「えっとですね。今多分、湊くんは例のスラングを見てくれてると思うんだけど」


俺は、スマホをいじる指を止めて、姫野の目を見る。
……にっこり、微笑まれた。


「そこにあるみたいに、私たちが戻ってきたことを察してくれてるような鼻のいい族の皆さんがちらほら、いるのね?」
「そうだね」
「でも、私たちは隠れてる間に戦力の保持が仕切れなくて、どうしても全盛期のようには行かないわけです。そうすると、お姫様を守っていられるほどの余裕が、なくてです」


「ふーん」


伊織は終始笑みを浮かべたまま。
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