片思いー終わる日はじめる日ー
「あんなにケンカしたのに。男の子ってすてきね、有実」
「わかんない……」
わかんないや、あたしには。
あたしも、石川も、麦も。
「有実。――ね、声かけよう。トラックから外に出ていく通路。あそこ2階スタンドからなら近くない? ね、行こう。行って、がんばってぇーって。ね、有実。そうしよう」
かたまりになって3色のゼッケンがスタジアムの外に出ていく。
もう競技を終えた、それぞれのクラスメイトたちが、銀杏の樹の下で、石垣の上で、スタジアムの2階スタンドで。
声を張りあげてエールを送っている。
「あ、出てきた。――出てきた、ほら! いっしょだわっ。赤根くーん、石川くーん」
白い半袖のポロシャツに1年生の緑のゼッケン。
みず色のタンクトップに、続きナンバーの緑のゼッケン。
前後して頭が揺れている。
きびきびと動くたくさんの脚の下で、落ち葉がかさかさ音をたてている。
がんばって。
がんばって!
どっちもなんて欲ばりなこと、あたしには祈る資格がないから。
「がんばってぇー! ほら、有実もいっしょに……」
「うん」
がんばろう。
ミンナ ジブン ノ タメ ニ!
「がんばろ――っ!」
届け、あたしの声。