片思いー終わる日はじめる日ー
 人口密度、すごっ。
 ふくよかなうっちゃまんが出て行ってくれててよかったわ。
「どうしたの、石川くん。どこか痛い?」
 見当違いな心配をする大海ちゃんにほほえんで、伊勢くんがブースを出て行った。逃げたな。
「…ぃや。ちげーし」
 石川ぁ。
 大海ちゃんに返す言葉だけはひかえめな音量なのは、とりあえずほめる。
 でもね。
「も、本当にいいかげんにしなよ。――帰るよ」
「まだ話、終わってねぇだろ」
「終わったわっ」
 みんなイヤだって言ったろうが。
 にらみあうあたしと石川に気づいて、大海ちゃんがこっくりと首を傾げた。
「でも石川くん。どうして今日じゃなきゃいけないの?」
 えっ?
 知らん顔で機材を拭いていた(ばく)の手まで止まる。
 まさか、まったく話がわかっていなかったとは。
 麦がダスターを広げながら笑うから、講師役を引き受けたんだなと思ったら、ほんの少し冷たい手が悲しかった。
 あたしも男の子に気づかってもらえる女子だったらなぁ…って。
 もちろんそんなのは、冷たい水でジャバジャバ雑巾を洗えるほど健康に生んで育ててくれた親に感謝しないといけないし。
 かわいくない性格は自分のせい。
 ほかの女の子をうらやましがるなんて恥ずかしいって、わかってるのにね。

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