片思いー終わる日はじめる日ー
* * *
期末テストまで、あと1週間。
最後の部活の日。
大っきらいな牛乳を、喉が渇いていればなんでも飲める! っていうキャプテンと、一気飲み競争しているところに中井が来た。
「相田、がんばってるんだって?」
そう言ったきり、あとが続かなくて、後ろ手に腕を組んで空なんか見たりして。
キャプテンはあたしに目配せすると、
「じゃあ、相田。試験もがんばれよ。中井先生、お先に失礼します」って。元気に走って行っちゃって。
気づまりな沈黙。
「センセ……?」
あたしが居心地悪いのは、麦のせい。
中井には関係ないってわかっていても、だって…麦は――。
「うん。思いきって聞いちゃおう。赤根 麦となにかあった?」
牛乳パックがあたしの手を離れて、できの悪いサイコロみたいに転がった。
「ごめん。わかってるんだ。こういうことは教師の介入すべき問題じゃないって。…わかってるんだけどね」
言いながら、中井はかがんで地面に転がった牛乳パックを追いかけたので、最後のほうは自分の胸にしゃべっているみたいだった。
「あの子、このごろ、ひどい絵を描いてるんだ。タッチも荒れてるし。――相田ならなにか知ってるんじゃないかと思って……」
あたしの手は、渡された牛乳パックを握りつぶした。
「な…んで? なんであたしが、知ってると思うんです。別にあたしは赤根くんのなんでもないし! 赤根くんがクラスの子とうまくいってなくても、あたしは全然! …全然、気になんかならないしっ」
「相田……」
「先生こそ、彼と、なにかあったんじゃないんですか?」
「相田?」
「赤根くんのことは先生が心配してあげればいいでしょ。あたしは関係ないっ!」