笑顔のそばに
「…そういう所、ずるいよ…」
多分、誰に対しても優しくて。
俺に対してだけじゃ、ない。
「…俺だけ、って無理かなあ…」
意識し始めたのはこの前の通話。
結局2人して寝落ちしたけど麗華が全部聞いてくれたからスッキリした。
麗華だって仕事で疲れてるのに俺のために時間を割いて相手をしてくれてるのが本当に嬉しかった。
「将斗ー、起きてる?」
「おきてるー」
「なら朝ごはん食べちゃいなよー」
階下から母親の声。
起き上がって麗華に返信しながら着替え始める。
「…どうしたら振り向いてくれるかな。」
「何独り言言ってるの?」
「んー、好きになった人の話ー」
朝ごはんを口に放り込みながら母親と会話する。
「え、誰、どんな子?!」
…俺より興奮するな母上よ…
「年上の人で、俺なんかよりずっと立派に生きてて」
「うんうん」
「病弱なのに一生懸命生きてて」
「うん」
「けど脆くて守ってあげたいそんな人。」
あくまで、俺のイメージだけど。
麗華の纏う雰囲気は1歩踏み込んだら消えてしまいそうな儚さがある。
それに、触れたら壊れてしまいそうなくらい…
儚くて脆くて…綺麗。
「守ってあげたらいいじゃん。」
「だーって…」
「その子好きな人でもいるの?」
…それが分からないんだよなあ…
何しろ何も分からない。
それなりにわかってきたつもりだった。
過去をはなしてくれたから。
「いると、思う。」
多分、だけど…
「…でも、好きなんだ。」
「前に進めてるじゃない。」
母さんの言う通り。
俺は少しずつ前に進めてきている。
1歩ずつ、確実に。
「うん、今の好きな子のおかげで前に進めた。
…正直出会って間もないけど俺の話全部聞いてくれたり…」
「この間も電話してたもんね。」
「うん、次の日仕事でも夜遅くまで通話に付き合ってくれるんだ。
そんな優しさに惚れた。」
…実際意識し始めたのは通話のときだから。
これは紛れもない本心なんだ。
いつか、俺の方を向いてくれますように。
【堀江将斗side END】
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