すてきな天使のいる夜に
ーside 沙奈ー



次に目を覚ました時には、大翔先生はいなかった。


目に冷たい感覚があって、大翔先生が目が腫れないようにと保冷剤をタオルで巻いて当ててくれたんだ。



枕元には、大翔先生からの手紙が置いてあった。



手紙の内容を見ると、



『目を覚ましたか?



いきなり、抱きしめたりしてびっくりしたよな。


でも俺は、沙奈のことをこれからもずっと支えていくから。


沙奈を1人にはしない。


何かあった時や、寂しくなったらここに連絡して。』



連絡先と一緒に、手紙にはそう記されていた。



すぐに、携帯を取り出し先生の連絡先を保存していた。



先生を抱きしめてから、心がふわふわしていた。



心臓もいつもより早く動いている気がした。



自分の胸に手を当ててみた。



「どうしちゃったんだろう、私…。」



病気で心までおかしくなってしまったのだろうか。



紫苑や翔太に、優しく抱きしめられてもこんな感情になることはなかった。



不思議な包容力。


だけど、先生が私から離れようとした時、離れたくない一心で先生を強く抱きしめていた。



なんだろう。



「沙奈ちゃん?」



頭がしばらく真っ白で、何も考えられなくなっていた。



男の人って、あんな風に誰でも優しく抱きしめるのかな?



大翔先生もそうなのかな?



そんなの嫌だな…。


あれ?


なんで、そんなことを考えてしまうんだろう。




先生が、誰かを優しく包み込んでいる姿を想像したくなかった。



ただ、私の担当医師っていうだけでそれ以上の関係があるわけないのに。




「沙奈ちゃん!」



「あっ、ごめんなさい。」



「大丈夫?ぼーっとしてるなんて珍しいね。


苦しい?


熱は無いみたいだけど…。」



看護師の安住さんが、私の額に手を当てていた。



私は首を横に振った。



「違います。


そうじゃないんです。」



「…?

そっか。

そしたら、お熱と血圧と酸素の値測るね。」



安住さんは、淡々と進めていた。



「酸素の値もだいぶよくなったから、少し酸素の量を減らすね。


鼻から吸うタイプのものにしたから、会話もしやすくなったわよ。」



「ありがとうございます。」



「ふふ。何かあったらすぐに呼んで。


私がいつでも飛んでくるから。」



またねと、安住さんは私に手を振り部屋をあとにした。



あまりにも親しく私に接してくれる。



それから私は、何も考えられず気づいたら外は真っ暗になっていた。



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