夢みたもの
音楽室に来る事は、航平に言っていない。

でも、勘の鋭い航平なら、あたしがここに居た事実から、ユーリに会っていた事にきっと気付く。

バレたら困る事じゃないけれど、まだあたし自身が混乱していて、上手く話せる自信がない。

変な誤解はされたくなかった。



あたしは思い切って顔を上げると、宮藤君に向き直った。


「あの・・・あたしがここに居た事、航平には黙っていて欲しいの」

「・・・へぇ?」


少し目を見開いて、宮藤君は意外そうにあたしを見つめた。


「雪村さんでも、堤に隠し事するんだね?」

「あの・・・別にやましい事がある訳じゃないんだけど・・・」


しどろもどろになりながら、あたしは宮藤君にそう言った。

鼓動が耳元で大きく聞こえて、顔が熱くなっていくのを感じる。



いつもと変わらない日常が続く事。

それがあたしの望み。

こんな面倒な事は、いつもだったら真っ先に避けている。


でも、今は・・・・



「お願い」


息を飲んで、宮藤君の答えを待った。



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