夢みたもの
それぞれの旅立ち
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「そっか‥良かった」


翌朝。

いつものように一緒に登校した航平に、あたしは昨日の事を報告した。


「お母さん‥日記読んでくれたみたいなの」

「うん」

「今朝、少し目が腫れてたけど‥‥嬉しそうに笑ってた。日記はお母さんから崇さんに返すって」

「そっか‥頑張ったね」


航平はニッコリ笑ってあたしの頭を撫でる。


「1人で心細くなかった?」

「‥ちょっとだけ。でも、気持ちを素直に伝えただけだから」


あたしが笑いかけると、航平も嬉しそうに笑い返す。

そして、その身を屈めると、あたしの額に小さくキスをした。


「‥‥なっ、ちょっと‥やめてよ!?」


思わず声を上げた。


「何で?」

「人が見てる‥!!」


慌てて周りを見回すと、あたしは航平の胸元を押して距離を取ろうとした。

でも、航平はニッコリ笑ってあたしの頭に置いた手を離そうとしない。


「誰も見てないよ?」

「そんなの‥分かんないじゃない!?」


そう言って腕に力を込めると、航平はあたしの手を取って小さく笑った。


「駄目」

「‥‥?」

「もう、ずっと‥‥ずっと我慢してたんだから」

「‥‥」


嬉しそうに笑う航平。

その笑顔が余りにも幸せそうで

余りにも綺麗に笑うから‥‥

航平を見つめながら、あたしは頬が熱くなっていくのを感じた。



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