令嬢と婚約者、そして恋を知る

友と彼女と私



 最後のチャンスだと、セルジオに掛けられた情け。
 大切な人を自分で傷付けてしまった私には、彼女の隣に立つ資格はないのかもしれない。それでも、何度考えてもやはり私には彼女を、エヴェリンを手放すことなど出来ない。

 それならばどうするか。答えは単純、誠心誠意謝罪をし本心を告げるしかない。受け入れてもらえるかは分からないし、彼女はまた逃げ出そうとするかもしれないけど、みっともなくても情けなくても引き止めて話をするのだと覚悟を決める。

 セルジオから説明してもらうのは簡単だ。それでも自分の預かり知らぬところで、やはりルーカスが相手では……ということになりでもしたら抵抗のしようもない。最悪、直接謝る機会を得られないまま関係が終わってしまう可能性だってあるだろう。それが何より恐ろしい。

 そうならないために考えようと、改めて決意した。

 まずは彼女と話が出来る場作りから、準備に取り掛かる。
 計画は仕事の合間を見繕い、セルジオに意見をもらいながら立てた。自分自身の尻拭いなのだから一人でやるのが当たり前だと考えていたが、またただただ頭を抱えて終わるんじゃないかと指摘されれば好意として素直に受け取るしかなかったし、彼にはすでにどん底に落ち込んだところを見られているのだから今更格好をつけても仕方がない。何より、エヴェリンのこととなると冷静ではいられないのは確かなのだから。

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