エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 急な引っ越しだったし、昨日今日はことごとくすれ違っていたから、私も時成さんも、お互いの予定をあまりを把握していない。

 とはいえ、今回の出張は前々から決まっていたものだ。

 私がまだひとり立ちする前に師事していた料理研究家の大先輩・泉町子先生が、プロデュースしたレストランを京都でオープンし、その記念イベントに私を呼んでくれたのだ。

 おもてなしの心を大事にする彼女の料理は絶対に勉強になるから、本当は紗耶香ちゃんと伏見くんも連れて行きたいと思っていた。

 けれどゲストは他にも大勢いて、当日はレストランの収容人数いっぱいになってしまうそう。なので、残念だけれど今回は私ひとりでの参加となる。

「じゃ、今夜にでも伝えてみたらどうですか? 弟子ふたりと一緒に京都観光を楽しんでくるから、留守番よろしくお願いしますって、超浮かれた感じで」
「いや、さすがに嘘をつくのはちょっと」

 いくら時成さんに浮気疑惑があってもあくまで疑惑だし、仕返しのようなことをするのは気が引ける。

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