エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「彼はそんなことしない。毎日一緒に過ごしていれば、わかるの」
「花純さん……」

 そう呟いた伏見くんの表情に、一瞬影が差す。けれど間もなく新幹線が発車するアナウンスが流れると、パッと明るい表情に戻った。

「それはそうと、楽しみですね、京都」
「う、うん。そうだね」

 彼の言葉で、いつか伏見くんがついた嘘が現実のものになってしまったことに気づいて内心慌てた。

 新幹線の移動では席が隣同士で、現地に着いてからも、同じパーティーに出席するのだから、ほとんど行動を共にすることになるだろう。

 時成さんにひとりで行くと言ってしまった手前、罪悪感が湧く。

【急遽、アシスタントの伏見くんも同行することになりました】

 スマホを手に、時成さんにそんなメッセージを打ちかけては消す。やましいことはないけれど、こんなに突然の予定変更、彼に変な風に誤解されたらどうしよう。

 葛藤の末、結局時成さんに連絡する決心がつかないままスマホをバッグにしまう。

 その後もなんとなく晴れない気持ちを抱えたまま、静かに動きだす新幹線の車窓を眺めた。

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