ウサギとリンゴの物語
エピソード 1
まるでこの日を祝福するかの様に澄み渡る空の下。
白いチャペル内には赤い絨毯が敷かれている。

真っ白なウェディングドレス姿の花嫁がベールを纏い、父親のエスコートと共に花婿の元へと向かう。

その花婿はと言えば、緊張しているのだろう。
キラキラ虹色に煌くステンドグラスを背に、いつも柔らかく微笑む顔は少しだけ強張っていた。

パイプオルガンの音色に合わせて聖歌隊の澄んだ歌声が響く。

誰もが二人の未来を祝福しているのを肌で感じていた。
二人の友人である私ももちろんその内の一人だ。

花嫁と父親が私の横を通り過ぎる。
花嫁のエスコート役が父親から新郎へとバトンタッチされた。

託す者と託される者。
言葉を交わさずとも交わる二人の視線は真剣そのものである。

新郎と花嫁が腕を組み牧師の前へと進み出る。
始まる誓いの言葉。
この場に居る全ての人が、二人の誓いを見届けている。

神聖なる誓いのキス。
花婿が花嫁のベールを上げようとしたその時だった。

ガシャン、と怪訝な音を立てて式場の扉が開かれたのは。
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