幼なじみは一途に絡まった赤い糸をほどく◆おまけのお話追加しました◆
昨日部屋の片隅に放り出したカバンから、小さなプラスチック容器を取り出した。中には白いクリームが入っている。

手術痕や傷痕を目立たなくさせる効果が期待できる医薬品だ。長年研究を重ねてやっと臨床試験もパスし世に出す手前まできた試作品だ。

これを小春に渡したらどんな顔をするだろうか?喜ぶだろうか?悲しむだろうか?

「政宗くん……」

呼ばれて振り向くが、小春の目は閉じたまま、寝返りをうったかと思えばまたすうっと気持ち良さそうな寝息が聞こえる。どうやら寝言だったらしい。その無防備ささえも微笑ましく感じる。

俺の人生にはいつも小春がいた。
小春の心臓を治したいから医師になろうと思ったし、小春が傷を気にしていると聞いたから医薬品の開発企業を直己と立ち上げた。

小春には何もしてあげられていないけれど、小春がいたから今の俺がある。

──ずっとずーっと政宗くんが好き

いや、ずっと好きだったのは俺の方だ。
ずっと一途に想い続けてきた。
本当に、ずっとだ。

「小春、好きだよ。ずっとずーっとだ」

俺はもう一度布団に入り直し、そっと小春を抱きしめた。無意識にしがみついてくる小春の額にキスを落とす。

小春の温もりに酔いしれ、俺はまた眠りの縁へと誘われた。幸せで蕩けてしまいそうだった。


【END】



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