幼なじみは一途に絡まった赤い糸をほどく◆おまけのお話追加しました◆
「小春も相変わらずここで働いてるんだ?」

「うん、今は専門学校に行きながらだけど、卒業してもここで働くつもり」

「小春のおにぎりは本当に美味しいからね」

「本当?ありがとう」

普通の会話なハズなのに、小春の胸は高まっていく。

また会えた。
褒められた。

政宗の言動ひとつひとつが小春の胸を満たしていき、体の奥から嬉しさが湧き上がってくる。

「やっぱりお医者さんは忙しいんだね?」

「いや、実は医師免許は取ったけど医師としては働いていないんだ。会社員として働いている」

「えっ?」

政宗は代金を支払い小春からおにぎりを受け取ると、以前と変わらない柔らかい笑みを浮かべた。

「じゃあ、また来るね」

「あ、うん……」

颯爽と去っていく政宗の背をぼんやり見つめながら、小春の気持ちは急にずんと沈んだ。

小春は、政宗への想いが再燃したと同時にまた失恋したと思った。
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