幼なじみは一途に絡まった赤い糸をほどく◆おまけのお話追加しました◆
政宗と一緒でよくおにぎりを買いに来ている小春の同級生、航成は、いつも愛想がよく爽やかだ。よく小春と二人で楽しそうに話しているところに遭遇してしまう。

政宗には見せないその小春の楽しそうな姿を見ると、政宗はチクリと心が痛む。小春のことが好きだと意識したその日から、事あるごとに嫉妬してしまうのだ。

けれどいつも遠慮してしまう。
自分が小春の恋愛対象になるなんてありえない。小春は自分の事を兄のような存在としか見ていないと思い込んでいるからだ。

「おーい、政宗~!」

優也に呼ばれて、政宗はようやく重い歩を進めた。

「何そんなところで佇んでるんだよ」

「あ、いや、ちょっと考え事してた」

「政宗くん、いらっしゃいませ!」

気づけばもう航成は去った後で、小春は政宗に向けて満面の笑みで挨拶をした。

「いつもの?それとも今日は冒険する?」

「ん、いつもので」

「はぁーい。お待ちくださぁい」

何気ない、いつも通りのやり取り。
ここに来れば小春に会える。
笑いかけてくれる。
小春を見るだけで幸せだ。

そう、政宗は自分に言い聞かせた。
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