拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着愛が重すぎます!~

 彼は愉快そうに身を乗り出すと、生暖かいものを見る目でエリアスを窺い見た。

「んで? いい加減、俺には教えてくれよ。仕事人間のお前が、早く切り上げて帰るようになった理由。毎夜、同じ店に通っているんだってな。なんだ? 女か? やっぱり、女がお前を変えたのか?」

「そんなことまで噂になっているんですか。この国の人間は暇ですね」

「何を言う! 古代より、人間の興味関心を引いてやまない議題、それが色恋沙汰だ」

 えへんと胸を張る王に、エリアスは呆れた目を向ける。彼の情報網がどこか、大方わかる。兵士との距離が近く、しょっちゅう訓練場に足を運んでは練習に混じる彼は、警備隊のネットワークを通じて情報を掴みたい放題なのだ。

 まあ、隠すようなことでもないし。そう思いつつも、エリアスはツンとそっぽを向いた。

「嫌ですよ。教えて差し上げません。ここで私が頷けば、あなたの手の者が相手の方を確かめに店にくるのでしょう? あの方との蜜月の時を、邪魔されるのは我慢なりません」

「お、おお! 天邪鬼め、わかりにくいが認めたな!」
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