渚便り【完】
もう夢を見るのはやめたんだ。この期に及んで悪あがきなんてみっともないから。
だから現実を受け入れて、こうして家庭も築いた。それが仮初の気持ちだとしても構わない。

手にしていた手紙を静かに破り捨てる。潮風に乗って、紙吹雪が宙を舞う。
私は水平線がくっきりと映る海を見据えた。


「ねえ、間瀬。間瀬は今この海のずっと向こう側で、心から笑えているかな?」


虫の鳴くような声でした問いかけに、当然返事はない。

これは小瓶の中に閉じ込められた雁字搦めの想いだけれど、私が間瀬を好きでいた気持ちは確かにここに存在していた。
そしてそれは今もまだ――……。



【渚便り】
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