渚便り【完】
学校行事の時に誰かと誰かが反発しているのを宥めるのもいつも伊波の役目だった。
優れたムードメーカーである伊波がこのクラスを去ることで、今後の人間関係に影響が出ないか若干不安ではある、と担任が心配しているほどにアイツの存在はデカかった。


「なぎさにバレないように隠れて書いてね」
「へいへい」
「変なこと書かないでよ」
「変なことってなんだよ」


俺は筆箱から黒のボールペンを取り出した。
何を心配しているのか知らねーけど、委員長がうるせーからさっさと書いて他に回そう。
ただ俺は元々文字を書くことが苦手だった。授業のノートをとるのはもちろん、何かの受付で氏名住所を書くのすら面倒と感じる。
それは自分の字が雑で汚いから嫌いという理由もあるし、こういう誰かに向けるメッセージとなれば、それを考えることすら億劫なのだ。

無論これまでにまともな手紙なんて書いたことがない。
だいたい、手紙だなんて女々しいことやってられるかってんだ。
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