勇者がうちにやってきた▼【完】
また今年もやってきてしまった。
彼氏いない歴=年齢の記録が更新される日が。


「“ちーちゃんへ。17歳のお誕生日おめでとう”……ねぇ」


冒頭部分だけ読んだメッセージカードをテーブルに置く。
続きなんて読む必要はない。だって毎年書いてることが似たりよったりだから。そりゃ全文読む気も失せるわけだ。

菱沼千歳(ひしぬまちとせ)様、と書かれた封筒には、今手にしていたメッセージカードしか入っていなかった。
二つ折りになっていて、開いたら絵が飛び出すアレだ。
立体になったバースデーケーキにはキャンドルや苺が乗っていて、全体的にパステルタッチの可愛らしいイラストには心が癒される。
その反面、こういうことをされると余計虚しくなるから、もうわざわざ手紙をくれる必要なんてないのにな、なんて冷めたことを考えてしまう。

例年、誕生日には両親から洋服やらゲームやらを買ってもらっていたけど、あれは確か中学一年生の時だろうか。
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