勇者がうちにやってきた▼【完】
「マオちゃん?」
「チトセよ」
「なに?」
「……エミリーは死に際にこう言っていたのだ。“おにいちゃん、わたしがんばってすぐうまれかわるから、そしたらまたいっしょにあそんでね”と。そうしてワガハイ達は指切りを交わしたのだ」
「え、それって……」
「うむ」


マオちゃんは私が何を言いたいか分かったように頷いて、


「恵美里はエミリーの生まれ変わりなのかもしれんな」


どこか切なそうで、だけど嬉しそうな顔。

気が付けば水溜りに描かれていた波紋がなくなっていて、空から注ぐ温かな陽が虹色のアーチを作りだしていた。
まるでエミリ―ちゃんがマオちゃんを励ましているかのような空模様に、自然と口元がほころぶ。

これは世界一優しい魔王の身の回りで、世界の境界線を越えて起こった、温かくて不思議な出来事である。
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