勇者がうちにやってきた▼【完】
「よっしゃストライクぅー!」
「やりますね!だけど僕も負ける気はさらさらありませんから」
「かかってこいやー!」


親分とあーくんが大きな球体を手に対立している。
ここは以前みんなで買い物に来たショッピングモール内にあるボーリング場だ。
向こうの世界にあるドングリ子豚転がしとやらがボーリングに酷似しているらしく、前から競い合いたいと言っていた二人のリクエストで、今日は遊びに来たわけだけど。


「あぁ~ん、姫ちゃんがいないとアタイ寂しいよぉ」


私の隣に座るちよこさんが肩を落としながら嘆く。
そう、今回の面子に姫はいないのだ。

せっかくみんなバイトが休みだと言うのに、姫を誘ったら「忙しいのでお断りしますわ」と返されてしまったのである。
このボーリングの件以外でも、最近はやたら忙しいアピールをしてくる。
出掛ける時は決まって欠席。
マオちゃんは家事をしてくれているとして、他のメンバーもバイトをしているという傍ら、唯一無職の姫が忙しいとはどういうことだという感じではあるが、忙しいものは忙しいらしい。

まったく。一日中パソコンにかじりついているくせに、どの口が言うんだか。
どうせ飽きずにBLを貪っているだけに違いない。
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