勇者がうちにやってきた▼【完】
「それぇ!勇者くんそっち行ったよぉ」
「任せてください!」
「あつしさんナイスボール!」
「マオちゃんパス!」
「ふぎゃ!」


和気藹々とビーチボールをしている面々を遠目に、海の家で買ったもっさい焼きそばを味わう。
現在私がいるのは海水浴場。
喪女である私がなぜこんなリア充の巣窟のような場所に赴いているのかというと、話は夏休みに入る前まで遡る。


「もうすぐ夏休みだよねー!海行きたくない!?」
「「別に」」


机に身を乗り出して訊ねてきた真純に、声を重ねて即答する私とヨリ。

「えー、なんで?夏らしいことしたいじゃん?泳ごうよー!」
「日焼したくないし」
「そんな暇があったら次のイベントのために原稿やりたいし」


更に訊ねてきた真純に、またしても否定的な返しをする私とヨリ。
真純には悪いけど、何が楽しくて海になんか行かねばならんのだ。
今言った通り日焼するのは嫌だし、泳ぐのも別に好きじゃないし、わざわざ遠出するのも面倒だし。

夏休みはバイト以外では、なるだけ家でゲームを消化して過ごすと決めているのだ。
あーくん達が来てからやっと訪れた長期休みを無駄にはしたくない。
積みゲーも増えてきているから、消化期間にしたいというのが本音だ。
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