勇者がうちにやってきた▼【完】
バイトも休みだし、今朝の星座占いも一位だったし、決行するなら今日だ。
私は机の奥から事前に用意していた手紙を取り出した。

“今日の放課後、校舎裏に来てくれませんか?”

それだけ書かれた簡素な手紙。
たったこれだけ書くのにすら十分間もかかってしまったなんて、他言できやしない。
これではまるで果たし状みたいだと思いつつも、想いを伝えるのは口頭が理想だと信じて疑わなかった私は、いち早く登校するなり近藤の靴箱に手紙を入れておいた。

手紙で放課後校舎裏に呼び出すだなんて、いくらなんでもベタすぎるかな。
でも直接声をかけるタイミングなんてなかなか無いし、近藤の周りには常に誰かしらいるから、人知れず告白するにはこの手段が得策なのだ。


「……よし」


あとは放課後を待つのみ。
深呼吸を繰り返した私は、まだ誰もいない早朝の教室に向かった。
きっとこんなことは一世一代のビッグイベントになるのではないだろうか。
だって、喪女である私が告白だなんて。
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