勇者がうちにやってきた▼【完】
「ちょっと、そこまでしなくても良いから。やめてよそういうの。顔上げてってば」
「それじゃ良いんですか!?」
「う……」


キラキラとした眼差しで見つめられる。
だからそういうの、アンタの顔のパーツには似合ってないんだって。
心の中で指摘しつつも、思考を巡らす。

なんだか凄いことになっちゃったけど、一応私の望みを叶えるためにはるばるやってきてくれたみたいだし。
一人で大きな一軒家を持て余しているから、別に与えられる部屋がないわけでもない。お金だって十分ある。
……それに、悔しいけどさっき助けてもらっちゃったから、借りがあるし。


「……少しの間だけなら」
「ありがとうございます!キミは女神だ!」


それさっき自分がコンビにの店員から言われたの引用してるじゃん。とは口に出さないでおいたけど。
祈るように指を絡めて、何度もお礼を言ってくる勇者が「計画通り」とほくそ笑んでいるのを知る由もなく、私は彼の寝床をどこにしようか思案していた。

かくして突拍子もない事件をキッカケに、異性との共同生活がをスタートせざる得なくなってしまったわけだけど。
その相手が、神様が17歳の誕生日プレゼントだと言わんばかりに、異世界からよこしてきたデリカシーのカケラもない勇者だなんて。
こんなぶっ飛んだ設定の乙女ゲーなんて、私はやったことないぞ!
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