温もりが思い出に変わる頃【完】
でももう３０半ばだし、そろそろ結婚したりして。悲しいけど、その暁にはファンとしては祝福しなきゃね。
ていうかとりあえず須藤さんだって気付いていないフリをしているけど、営業的にはその方がいいよね？
せっかく「佐藤」だなんて無難な偽名を使って来てくれているし。
有名人の相手なんてしたことないからどんな接客が適切か全然わからないや。


「あの、佐藤さん凄くカッコいいですよね！そんなにハンサムだったらすっごくモテるんじゃないですか〜？」
「そんなことないよ。でもありがとう」
「いいえ〜」
「…………」
「…………」
「…………」


あれ、ちょっと待って。須藤さん口数が多い人だとは思っていなかったけど、この会話の続かない空気は良くない。
というか芸能界を引退した人に容姿を褒めたりモテるだなんて話題振るのは地雷だったかな。
止むを得ず引退という形だったわけだし、あの界隈への心残りも多いことだろう。
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