【完】黒薔薇の渇愛




ーーグッと私の太ももの間に、桜木の脚が割って入ってきた。


ドアノブはすぐそこにあるのに、桜木が私の両手首を掴んで自由を奪う。



「抗えって……あなたが言った」


「言ったね~。でも君が抗ったところで俺が"はいそうですね"で終わると思う?」


「……」


「俺のいる場所で、俺に逆らうなんて。
 頭の悪い証拠だよ?」



「……っ」



この男は言ってることとやってることがめちゃくちゃだ。


掴めない、掴ませてくれない。


桜木は、話は聞いてくれても、同調は絶対にしない。


自分が言ったことさえも、どこか他人行儀な男。


この男の言う通りになんかするもんじゃない。


けど、抗い方を教えてくれたのは
確かにこの男でもあった。


不思議と……さっきよりも強気な自分がいることに自分自身が驚いている。



< 60 / 364 >

この作品をシェア

pagetop