【完】黒薔薇の渇愛






昨日のことを思い出すと、白昼夢でも見ていたんじゃないかと思ってしまう。



あの後約束通り桜木は私をバイクで送ってくれた。


馴染みのないバイクのヘルメットと、渋々桜木のお腹に回した手。

走り出すバイクに、風を感じながら。
奏子のことを思い出して、なんだかまた静かに涙をこぼしていた。



『もう会いたくないから、岡本奏子君のことは忘れる様に~』


家の近くのコンビニの駐車場でおろされ、桜木はそう言って別れを惜しむことなくバイクを走らせ帰っていった。



……私だってもう会いたくないし。



先にそれを言われたことがムカつく。


けど、奏子に関わらなければもう会うことはないってことは
やっぱり桜木……まだ奏子に何かするつもりなんだ。



彼と関わらなければ、桜木とはもう会うことはない。


それってつまり、桜木なりに私のこと心配してくれてたりして。


……ううん、そんなわけない。


あんな、自分の家族でさえ心配しないような男
一日前に会った私を心配するわけないじゃん。


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