キミと、光さす方へ
歩いていると不意に回りの景色が影を帯びたような気がしてあたしの歩調は緩くなった。


それに合わせて両側を歩く両親の歩調も緩くなる。


あたしの視界の右側に坂道が見え始めていた。


意識して見なくても、それは頭の中に流れ込んでくる映像だった。


両親がなにか話をしている。


あたしに話しかけている。


その声が途端に聞こえなくなっていた。


坂道が近付くにつれて足は重たくなってきて、もっと近づくと体全体が重たくなってくる。


これ以上歩けないと思い、あたしはついに立ち止まってしまった。


立ち止まり、呆然として坂道を見つめる。


両親がまたあたしになにか話かけた。


声はただの音になって、あたしは認識することができなかった。


坂道を見つめていると心臓がドキドキしてきた。


あたしは自分の胸に手を当てる。


やっぱり、普段の倍くらいの速さで動いている。
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