俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~

護り切ることが出来たその姿に、手を伸ばし…たくても、伸ばせない。



その繋いだ手を…離さないでほしかった。

二人で歩いて、駆け抜けて行きたかった。



ゆらゆらと揺れる視界が、フッと真っ暗になり、伶士の姿が見えなくなる。

そこで、私の意識は途切れた。

糸が切れた人形のように、体がバターン!と横に倒れたその痛みを味わうこともなく。



《なずな…》



最後に、私の名前をちゃんと呼んで欲しかった。



でも、それももう叶わないんだ。

私は、もうダメだから。死ぬから…。



…なら、最後にこの思いだけは届いてもらいたい。



《伶士、幸せになれよ…》



伶士、これからはもっと、もっと幸せが待っている。

幸せに…なれ。



私は、傍にいることが出来なくなったけど…。



浮かんでくる彼の笑顔を、目の裏に焼き付けて、願って。




(伶士、じゃあな?……)




私の意識は、何もかも闇へと吸い込まれていった。

あの黒炎と同じ色をした、漆黒の闇の中へ。











★★★★★mission9 eNd★★★★★★
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