やさしいベッドで半分死にたい【完】
きっと笑顔溢れる生活になる。そうして、ふいに私を思い出してくれるかもしれない。いつかの記憶の中でかがやく何かに、なれればいい。

それだけで、きっと十分すぎるくらいだろう。


「……うっ、や、だな」


――本当は、離れたくない。


一人つぶやいて、孤独に消える。泣き出して、横を向いたまま、枕に零れ落ちてしまう。

花岡なら、きっと、そっと頬に触れて抱きしめてくれただろう。何も言わずにそばにいて、夜を明かしてくれた。

もう、絶対に縋りついてはいけない。

やさしい思い出を抱えて、必死で孤独の中で縮こまっていた。平気なのだと力強く言って、花岡に笑って見せられる私になりたい。

あんなふうに、『間違えていないか』と聞かせているような自分には絶対になりたくなかった。すべて正しいと言ってあげたい。守ってくれた分だけ強くなって、期待に応えて――。


「……なお、さん」


空虚に囁いている。どれだけ素敵な音だろう。この音の響きだけを抱えて、この場でなくなってしまいたい。

やさしくない冷たいベッドで、ひとり泣きぬれている。もう、この世に一人しかいないような気分だ。戻るだけ、現実に、向き合わなければいけないだけ。

ただ、逃げていただけ。


「南朋さん」

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