やさしいベッドで半分死にたい【完】
花岡の節くれた指先が、書き殴った音符に触れていく。一音一音を愛するような指先で、勝手に痺れて止まらなくなった。


「お前、本当に好きなんだな」


どこかで、誰かに認められたかったのかもしれない。この生き方を、誰かに見つけてほしかった。ありのままの私でよいのだと言ってほしかった。


「すげえよ」


その言葉が聞きたくて、必死になったのかもしれない。

つよく、胸に響いてとまらない。飾り付けない人が囁き落としてくれる。心の底から思っていることを打ち明けてくれているのだと信じられた。あなたの言葉なら、無条件に信じたいと思える。


「もう頑張らなくて良いって言ってんのに、ずっと先に走っていく。……まぶしすぎて、ずっと痛いと思ってた。つらいことばっか続けるお前のこと、助けてやりたいと思ったんだよ」


ずっと助けてくれていた。いつも守ってくれていた。

逃げ出したくなるたびに、現実逃避のように呟いたできなかったことたちを、いつも丁寧にかき集めてくれていた。私の目の前に差し出して、たくさんのすばらしいものを教えてくれた。

けれど、結局私は、藤堂周から逃げ出すことはなかった。


「でも違うんだな」

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