私しか、知らないで…
水槽越しの恋

ドン…



「あ、すみません…」



「痛っーーー…」



図書館のエントランスで人にぶつかった



「大丈夫ですか?」



ぶつかった女性が倒れた

そっちがスマホ見ながら歩いてたけど…



「手…」



「え…?」



「手、引っ張って…
立てない…」



「あ、はい…」



オレは女性が伸ばした手を掴んで引き上げた



「…ありがとう」



女の人の手って…スゲー柔らかい



「ありがと!
もぉ、大丈夫だよ!
手、離して…」



「あ、すみません!」



「フフ…アハハハ…」



女性が笑った



え、なんかオレおかしいかな?



「顔、真っ赤だよ」



え!!!



「ハイ…これくらい赤いよ」



女性はぶつかった時にオレが落とした

大学入試の問題集を拾ってオレに言った



「え、こんなに!?」



「ウソ、ウソ…アハハハハ…」



どー考えてもわかるウソなのに

オレ焦ってる



からかうなよ!

もっと赤くなる



しかも落とすとか縁起ワル…

大学落ちたらこの人のせいだ



イラ…



「すみませんでした
じゃあ…」



「そこの大学受けるの?」



「…はい…」



イラ…

そんなのどーでもいいだろ



「へー…
じゃあ、私の後輩になる」



「え…」



「私は、もぉ卒業するけどね
春から就職決まってるから…
無事単位とれたら、ね…」



そう言った女性をよく見たら

綺麗な人だった



ヤバイ

また赤くなる



「あ、君が後輩になるのも
無事受かったらか…」



ムカ…



一瞬でも綺麗な人って思ったこと撤回する



「じゃ…」



「あ、怒った?待ってよ…」



女性がオレの腕を掴んだ



ちょ、ちょっと、近すぎない?



「なんですか…?」



赤くならないように平常心を保ちながら言った



「塾とか行ってる?」



「いえ…」



「へー…すごいじゃん!
自分で勉強してるんだ」



「勉強わりと好きなんで…」



「ふーん…そんな人いるんだ」



イラ…



なんなの?この人



柔らかい

なにが?



え…



当たってる

なにが?







オレの腕に彼女の胸が当たってた

しかもお互い薄着だし…



ヤベ…

きっとまた赤くなってるオレ



「ごめん、ごめん…
そんな顔赤くして怒んないでよ!」



イヤ…怒ってるわけじゃなくて…



「ごめん、許して!お詫びさせて!」



「お詫び…?」



「うん!
私で良かったら入試までサポートするよ!
わからないところがあったら聞いてよ」



あ、なんだ…

なんか、少し違うこと考えた



「結構です
腕、離してください」



「もぉ…
ハイ…一応私の連絡先
いつでも連絡してね」



図書館の貸出レシートの裏に
LINEのIDを書いて渡してきた



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