こんな思いを···いつまで

···鮎川・大倉


鮎川・博····

あの日、財閥全てから退いた。

今は、妻・五月と母・菫の
墓守見たいな事を
やらさせてもらっている。

今まで、墓に来るよりも
仕事をすることが二人の為だと
思っていた。
だが····私は····間違っていた

五月の·····
母の·····の思いとは真逆に·····

たった一人の
肉親である···娘を
傷つけ···蔑み···疎ましく思い
目の入らない所へと
追いやり····
ひどい····酷すぎる親····だ·····

邸は売り
出家も考えたが
財閥の事も考えて
寺院の近くに小さな家を建て
通いの家政婦といる。

先日、思わぬ来客があった。

「ご無沙汰しております。」
「その節は、申し訳ありませんでした。」
「やめましょう。以前の事は。
今日は、お知らせに寄らせて頂きました。」
と、秋穂さんは、写真と紙を
見せてくれた。

写真は、
ひまりとモルガン氏
三井、三菱、住友財閥の総帥と
お母さん方との結婚式の写真だった。

そして、小さな、小さな、男の子
の写真。
思わず、秋穂さんを見ると
秋穂さんは、首をふり
「マシュー君は、ひまりの血が流れて
いれば、私の子だと言いました。
それに。」
と、次の写真には、その子が
目を開けている写真で
その瞳は、モルガン氏の瞳だった。

「ひまりちゃんは、
アークを奇跡の子だと言っていましたよ。」

もう一枚は、アメリカでの式の
写真で、多くの人達に囲まれる
ひまり達の写真がのる紙であった。

配信されたようだ。
「あの子は、幸せなんですね。」
と、言うと
秋穂さんは、頷き帰って行かれた。
俺の頬には、涙が流れていた。

今は·····
遠く離れた地····にいる
娘の幸せを祈るしかなかった。



大倉の翼と静の間にできた子は、
女の子だった。
友章は、落胆したが
妻、理佐にかなり叱られた。

「あなたと翼のお陰で
わたくしは、先輩方も失いました。

財閥からも離れた今
家族一丸となり
乗りきるしかありません。」
と、おとなしい妻の理佐から。

翼は、ひまりの料理や
生粋の財閥の娘である
品格や上品さを
目の当たりにしていたから
静に落胆し
ずいぶん喧嘩もした。

だが、母に
「みっともない!!
どちらも、どちらです。
しっかり、子育てしなさい!」
と、怒鳴られて
もう一度だけ、
やり直して見ようとなった。

今は、静も別の会社で働きながら
家計を助けている。
娘の実来(みく)は、
お義母さんが日中はみてくれている。

ひまりさんにしたことが
すべて、自分達に戻ってきているのだと
おもうが。

自分達のしてきた事を
もう、会うこともない
ひまりさんへ頭を下げた。
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