SP警護と強気な華【完】

(いなくなったかな…)

背後の気配がなくなった所で建物の間に入り
壁に隠れながら息を潜めて辺りの様子を伺いつつ
ポケットから取り出した携帯電話で
警察に連絡しようと操作していた。

しかしそれがいけなかったのか
すぐ後ろから伸びてきた手に気が付かなかった。

「ッ!?」

振り返る隙も与えられず
伸びてきた手に口を塞がれてしまう。

(油断したッ)

鼻まで覆う手の大きさからして相手は男。
カトレアは塞いでいるその手の小指を両手で掴み
力いっぱい思い切り外側に引っ張ってみた。

「ッ痛」

思った以上に効果があったのか
彼女の思い掛けない行動と指の痛みに男は一瞬怯み
その隙にカトレアは咄嗟に手を払いのけ
振り返り後ずさりしながら相手と対面。

相手の姿は
暗闇に溶け込む濃紺のスーツを着用した180㎝を超える長身の男。

「おいおいおい
 警護対象の金持ちお嬢様が
 護身術を身につけてるなんて聞いてねーぞ」

男は誰に言ったのか
めんどくさそうに溜め息交じりに言葉を漏らしている。
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