LOVE and DAYS…瞬きのように
すぐに健吾が戻ってきたので、ホッとしていると
「おい、あれって」
と、男のひとりが言った。
「……あ?」
聞き逃さなかった健吾が、不機嫌な顔で彼らを見下ろす。
一触即発の不穏な空気を振り払うように、あたしは明るく言った。
「健吾! 早く帰ろうよ」
「……ん? ああ、そうだな」
健吾は急にとぼけた顔になり、あたしの頭をぽんと優しく叩く。
なるべく早くこの場から去りたくて、あたしは勢いよくバイクに乗った。
「ちゃんとつかまれよ、莉子」
いつも通りの健吾の言葉。
「うん――」
震動が体に伝わり、髪が風になびいた。
健吾の背中、健吾の匂い、流れる夜の景色。
いつまでも続いてほしい、幸せな日々。
……大丈夫、気のせいだ。
あの男たちが健吾を知っているように見えたのは。
そして、“莉子”という名前に彼らが反応したように見えたのも、きっと気のせいだ。
何度も自分にそう言い聞かせながら
あたしはぎゅっと目を閉じて、健吾にしがみついた。