LOVE and DAYS…瞬きのように

「ありがとうな」


当たり前のような仕草で、髪をクシャッとされる。

払いのけるのすら忘れるほど、ごく自然に。


……こんなことならグロスだけじゃなく、髪も巻いておけばよかった。

なんて考えが頭をよぎるあたしは絶対、おかしい。


「と、とにかく」

あわてて声を出すと、みごとに裏返っていた。

「あのときは月島…先輩に迷惑をかけてしまったから――」

「別に迷惑じゃねぇし。
あと、先輩って呼ぶな。健吾でいい」


周りで見ていた人たちから小さくどよめきが起こった。

真由ちゃんも興奮気味に何か言っているけど、ちゃんと聞き取れない。


健吾でいい、って……。
あたしは“後輩”なのに?


そんな戸惑いを見抜いたのか彼は

「今さらお前に後輩ぶられてもな」

と、笑った。








< 38 / 580 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop