LOVE and DAYS…瞬きのように
健吾のバイクが見えなくなってから、あたしはアパートの階段を上った。
温かい気持ちが体中に満ちあふれていて、自然と足取りも軽くなっていた。
玄関の前で、鍵を取り出すためにバッグを開く。
そのときだった。
突然の強い風が、真横から吹きつけた。
「あっ……!」
叫んだときには、もう遅くて。
バッグに入れていた写真が、風にさらわれて舞い上がった。
健吾の誕生日にみんなで撮った、思い出の写真が――。
あわててつかもうとするあたしから逃げるように
写真は風と同じ速さで、あっという間に飛んでいく。
そして、月明かりのない暗い夜に吸い込まれていった。
「………」
ほんの一瞬の出来事。
ついさっきまでは確かにあったものが、いとも簡単に失われてしまう。
あたしはしばらく茫然と、その場に立ち尽くしていた。