翡翠の森
言葉の重み



・・・



《ったくさぁ、いい加減にしてよね。見てるこっちが恥ずかしいよ》

(何とでも言え。ジェイダの反応が可愛い。いい傾向、いい傾向)


ジェイダを部屋へと送る道筋で、マロがロイだけに話しかけてきた。


《……言っちゃおうかなー。王子様は笑顔の裏で、下心ありありだよって》

(やめろ。……やめてくれ。今度マシュマロ用意しとくから)


気になる女の子が側にいて、全くやましいことがないと言えば嘘になる。
だが、そこまで酷い妄想はしていない……はずである。


「……?? 」


隣で、ジェイダが不思議そうに首を傾げる。
その仕草は、やっぱり可愛らしい。
どうやら聞こえていないのにほっとすると、マロがいるポケットを軽く弾いた。


《ちょっと! かよわい小動物を苛めない……

「……ロイ……! 」


頭の中で、マロの文句が掻き消された。


「……アル。どうしたの? 」


城内を探し回ったのだろう。
兄の息は切れている。


「よかった、ここにいたか。……ジェイダも」


用件を尋ねてはみたものの、見当がついて目を閉じる。


(……きたか)


ずっと待っていたのだ。
この国の王子として、喜ぶべきことであるのに。


「……クルルからの使者が来た」


・・・


『先日は、愚息が大変失礼をした。貴国から友好の申し出があったことは両国にとって大きな一歩であるとともに、クルルにとってもとても喜ばしいことである。祈り子とアルバート王子の婚約も、嬉しい驚きであった』


けれども――。


『もしも雨が降らなければ、お側にいる祈り子は偽物だったことになる。そんなことがあれば、クルルとしては申し訳が立たない。よって、不肖の息子が言いだしたことで恐縮であるが、今度のことで乙女の真偽を見極めるというのは如何か。そのうえで二国の今後を考えても、遅くはないかと思われる』


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