追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
すると、謁見室の入り口から第三者の声が上がった。

「待ってください!」

高そうなドレスに身を包んだ少女が、息を切らせて私の前に走り出る。

話題に上っていたスミレだ。

淡い色合いの柔らかそうな茶髪に、長い手足を持つ年頃の美少女は、目に涙を浮かべながら王と王子に訴えかけた。

「もういいんです。私は平穏に聖女として過ごせれば」

しおらしい様子で顔を覆う少女は、泣いているようにも見える。

「この人を、許してあげてください」

しかし、王太子は苦いものを飲み込んだ表情で答えた。

「スミレ! こんな女を庇うというのか!? 君を傷つけた罪人だぞ!!」

「ええ、そうね」

だから、罪人ではないって……という私の訴えは、またもや無視される。一方的すぎる断罪劇だ。

玉座の横から駆け寄る王太子の傍らで顔を覆いながら、にんまりと口元をつり上げたスミレが囁く。

「そんな。許してもらえないなんて――とっても可哀想」

両手の下の笑い顔、隠しきれていないから!

私にだけ見える角度で、スミレは「ベー」と舌を出してみせた。

「くっ! 聖女スミレにここまでさせるなんて! なんて罪深い女なんだ」

しかし、周りの人間は、信じられないくらいあっさり彼女に騙されている。

「偽聖女、お前は国外追放する!! 本来なら、処刑も免れないところだが、優しいスミレに感謝するんだな!」

優しいも何も、私を嵌めたの、その子だよね?

一体全体、どうしてこんな事態になってしまったのか。自分の行動が悔やまれる。
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