ささやきはピーカンにこだまして
「みんな、集まったかな?」
 3年生の日本史担当の益子先生が、わたしたちの監督だ。
 週2の部活なんて、くやしいけど同好会みたいなものなので、公式試合のときは監督、コーチに登録してくださっている先生がたがそろうけど、普段の練習は益子先生が男子と女子を兼任してみてくださっている。
 もっとも練習メニューは歴代のキャプテンにお任せ。
 監督責任者として職員室に残っていてはくださるけど体育館に来ることもほとんどない。
 今日の益子先生は、めずらしく練習を最後まで見守ってくださった。
 なんとなーく理由はわかっているので、さっきから目で追っている結城先輩はとても緊張している。
 いやだな。

 アリーナのライトに照らされて、先輩のやわらかそうな黒髪のてっぺんには、とぎれとぎれの光の輪がチラチラ。
 今はもう遠い、あの…スクールバスのひと。
 初めてのトキメキは、今もわたしの心のなかに大切にしまってあるけど。
 やっぱり顔も知らないひとよりも、目の前のステキ男子にときめいてしまうのはしかたないわけで。
 結城先輩がわたしの胸どきゅん男子なのは、2年の子はみんな知ってる。
 だってわたし、ぼーっとしているときは結城先輩のことを見てるんだって。
 わかりやすい子だよ、って桃子なんて苦笑したしな。
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