ささやきはピーカンにこだまして
「だってさ。あとからもっと好きになれるひとがでてきたら、どうすんの? まだいるかもしれない。もっと好きになれるひとが、すぐそばに、まだいるかもしれない。――そう思ったら公認カレシなんて作れないよね」
「…………」
 う…わぁぁぁ。
 初めて聞いた。桃子の恋愛観。
「このひと。…って。ビビビって。ひらめか。――ないの?」
 くぅ…。
 これ以上は無理。
 ごつんと頭から床に激突。
 桃子が代わりにフロアに寝転びながら笑う。
「それ、あんたのバスの王子様のこと?」
「…………」
 さすがのわたしも、顔も知らない男の子を運命のひとだなんて言えないけど。
 桃子の顔が完全にニヤニヤおもしろそうだから、つい真面目に考えてしまう。
「なによ。まさか。マジに好きなひと。できた?」
「…………」
 マジに…って。
「いいから! はい、…2。…3。…4」
「ちょ…。カウント早ぁーい」
 とりあえず桃子を黙らせて。
 わたしはスクールバスの王子様のことを考える。

 きれいな指。
 天使の輪っか。
 すてきだと思った。
 ときめいた。

 でもそれって――…
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